【93】同人ゲームという選択肢

Heppoko

 この文章は、主に学生のみなさんやゲーム業界以外で働いている方に向けて書いています。

 みなさん、ゲームを作るのが好きですか? 作ってみたいですか?

 自分が作ったゲームをみんなに遊んでもらう、という夢を叶える方法としては、ゲーム会社に就職することが最初に頭に浮かぶかと思いますが、もちろんそれ以外にも手段はあります。

 例えば、最近ではスマートフォンで全世界に向けてゲームを公開することができますし、コンシューマゲーム機でもインディーゲーム制作者が開発できるようになってきています。

 また、ここ日本においては、コミックマーケットなどの同人誌即売会でアマチュアの同人作品として自作ゲームを配布するという文化が細々とながら続いてきました。

 ここでは、自作のゲームを同人ゲームとして配布するという選択肢についてお話したいと思います。

 オンラインで全世界に同時発信できるこの時代に、なぜ同人作品として即売会で配布するメリットがあるのか。

 それにはいくつかの理由がありますが、その前に 1 つ質問をさせてください。

 「同人ゲーム」と聞いたときに、どんなイメージを思い描きますか?

 おそらく、成人向けゲームや、権利的に問題のあるゲーム、あるいは特定ジャンルにばかり偏っているもの、といったイメージを持っているかと思われます。

 そういったゲームが目立っていることは否定しませんが、同人ゲームは「なんでもありに近い」(であるがゆえに、他所では配布できない作品が存在できる)世界です。

 同人ゲームの世界は、作品自体だけでなく制作者であるサークルも多岐にわたっています。

 将来の商業展開を目指して切磋琢磨するサークル、完全に趣味と割りきってひたすら自分の好みを追求するサークル、創作活動を通してプレイヤーや他の制作者との交流を楽しむサークル、などさまざまです。

 こういった多様性に惹かれて本当に面白いゲームを求めるマニアなプレイヤーが集まり、制作者との直接の交流が生まれたりもします。

 また、即売会の会場では、完成作品を配布するだけではなく、制作途中のバージョンを配布してプレイヤーの意見を聞きつつ完成を目指す、といったことも一般的に行われています。

 非常に長期間を要するゲーム制作においては、制作途中でのプレイヤーの声がモチベーションの維持に一役買っているのです。

 そして、即売会に参加する一番大きなメリットは、締め切りが設定されるということです。

 実際のところ、締め切りがないとゲームは完成しないものです。

 ゲーム制作に情熱がある人ほど、延々と作り続けてしまいがちです。

 即売会という動かせない締め切りがあるからこそ完成した、というゲームは多いでしょう。

 他にも、制作者同士の交流も即売会参加の大きな魅力の 1 つです。

 他のサークルががんばっているのを見ると自分のテンションも上がりますし、ゲーム業界だけではないさまざまな業界の人達との交流によってゲーム以外についての視野も広がります。

 また、即売会だけではなく、勉強会や飲み会、あるいは飲み会、そして飲み会なども日々開催されています。

 他の一般的な大人の趣味と同様に、普段の世界を超えた交流を持つことができるのです。

 このように、アマチュアがゲーム制作自体を楽しむ文化が日本にはあります。

 ゲーム会社に就職しなくても、ゲームを作って売ることはできます。

 売れ筋じゃないゲームでも、堂々と売れる場所があります。

 みなさんもゲームを作って同人ゲームとして配布してみませんか。