【94】『コミケット』という世界か

D.N.A.

 D.N.A.Softwares という同人サークルを主宰しております、D.N.A. と申します。「同人ソフト」という土俵で、かれこれ 13 年ほど自主制作のゲームソフトを作ってきました。

 今回は最近聞かれるようになった「インディーゲーム」ともちょっと違う、「同人ゲーム」の世界についてお話をさせてください。少々思い出話のようになってしまいますが、「同人ゲーム」という世界が具体的にどんなものなのか、それを知る 1 つの手がかりになればと思います。

 「コミケット」正式名称を「コミックマーケット」といいますが、簡単に言ってしまうと「個人・アマチュアの創作のお祭り」です。夏はお盆(夏コミ)、冬は年末(冬コミ)と年 2 回、東京は有明のビッグサイトにのべ数十万人が集結し、漫画をはじめとしたさまざまな「創作」がお披露目されます。

 もちろんその中には「ゲームソフト」も含まれており、だいたい 1 回のコミケットで 800 サークルくらい†の同人ソフトサークルが参加し、新作のゲーム(あるいは体験版だったりもしますが)を頒布しています。

 私は 2000 年の夏コミが初参加だったのですが、商業では滅多に出てこない「Windows 用のシューティング」が数多く頒布されており、初参加の興奮もあって無我夢中で片っ端からソフトを買い漁った記憶があります。

 そしてサークル参加を始めたのが 2003 年の夏、当時人気であった同人ソフト『月姫』の二次創作ゲームを作って††参加したのですが、自分たちで作った(開発はもちろん、製造も)ゲームが手にとって頂けるというのは本当に嬉しいものでした。

 今でこそダウンロード販売もだいぶ市民権を得てきてはいますが、2000 年頭の頃はまだブロードバンドもあったりなかったりで、大容量のゲームをダウンロードさせるのはそこまで現実的ではなく、最も効率的な手段としてやむを得ず手渡し頒布を選んでいたというところもあるのですが、それ以上に「実物がある」ことの喜び、装丁から世界観を表現するという楽しみ、そういうあたりに醍醐味を感じる人もたくさんいるようです。ダウンロード全盛の今でもなおパッケージにこだわるのは、パッケージを開いてゲームに至るまでの雰囲気だったり、パッケージを手に取って選ぶときの気持ちだったりが忘れられないから、かもしれません。

 コミケ参加を重ねる中で、さまざまな縁から同人ソフトだけでなく漫画・イラスト、音楽と多方面に知り合いが増えていき、自分の中でのコミケットが単なる「自分の作品を見せる・売る」場から「作品作りの起点」へと変化していきました。他の方の作品を見て学びモチベーションを高めるという精神的なところももちろん、他の作家さんとコラボしての作品作りなど、より実務的な点でも、もはや切り離しがたい存在になってきています。

 数千数万の作家がリアルで一同に会する場所はコミケット以外には存在しません。今でこそ SNS の発展などでネット上だけでも多くのコラボが産まれていますが、それでもなおコミケットの存在感は陰ることはないと信じています。

 私はこれまでに何度も何度も「ゲーム業界人は一度コミケットの同人ソフトスペースを見にくるべき」とお伝えしていますし、これからも何度でも言い続けるつもりです。

 個々のクオリティは商業に及ばなくとも、商業とも「インディー」とも違う、ある種の「熱量」を感じることができると思います。