【65】ゲーム業界誌 GameBusiness.jp の 3 年
「これからはサラリーマンでも、1 ~ 2 割の時間は会社ではなく、自身の属するコミュニティの貢献に使う時代になる。それが新しい仕事につながるようになる」。数年前に今は IGDA 日本の代表を務める、そして本書の編集担当でもある小野氏に言われた言葉が今でもしばしば思い出されます。GameBusiness.jp はまさにこうした考えに基づいたメディアだからです。
私は長年、インサイドというユーザー向けのゲームメディアをインターネットで運営してきました。インサイドを含め、多くのゲームメディアはしばしば PV につながらなさそうな業界動向を伝えます。それはゲームメディアもゲーム業界というコミュニティの一員であり、そのコミュニティの発展は自身の利益でもあるからです(直接は利益をもたらさないにしても)。
ゲーム業界誌という位置付けの GameBusiness.jp の表のテーマは「ゲームの未来を考える」ですが、裏テーマはゲーム業界への貢献なのです。もちろん営利企業がやるわけですから、続けるためには多少の収益は必要ですが(スポンサーの皆様ありがとうございます!)。
GameBusiness.jp の立ち上げは非常に簡単なテーマから始まりました。それは「日本にゲーム業界誌を作りたい」ということでした(要は日本にも Gamasutra や Develop を、ということです)。大きな業界でありながら、それを支えるメディアがないというのは不思議なことに思えました。誕生直後のメディアが苦労するのはいかに必要な領域をカバーするかということですが、幸いなことに「業界誌で一筆書いてみたい」というありがたい方も現れてくれるようになりました。数年続けた結果、毎年 3 月に米国で開催される GameDevelopers Conference に、憧れであった Gamasutra や Develop と並んでメディアパートナーに加えてもらうことができました。
次なるテーマは「業界の壁を壊す」であると考えています。業界誌からすると自己矛盾のようでもありますが、ゲームはそもそも絵、音楽、物語が組み合わさった総合芸術。さまざまな分野の影響を受けて進化を続けてきました。一例では、近年のモバイル革命はゲームに大きな影響を与えています。ゲームに携わる人は、モバイルデバイスの進化にも無関心ではいられません。あるいは、次の“スマート化” はメガネだ、腕時計だ、と言われています。これらはゲーム、エンターテインメントのあり方に大きな影響を与えるでしょうから、ゲーム業界誌としてもカバーすべき範囲になります。重なり合う隣の領域の動向も伝えよう、というのが GameBusiness.jp の次なるステップになります。
ゲーム業界への貢献の最終的なゴールは、メディアを通じてゲームが発展していくことにあると考えています。短期的には、ある記事が製品開発のモチベーションになった、ある講演のレポートがハードルを乗り越えるきっかけになった、といったことです。長期的にはこのメディアから刺激を受けて活躍したり、業界を目指す人が増えたりしていくことです。そのためには質、量ともにさらなる努力をしていくつもりです。また、インターネットにおけるメディアビジネスの観点では、質の高い(コストの高い)コンテンツは収益に見合わないと一般的に言われていますが、それを克服し、質の高いコンテンツが更なる収益を生むサイクルを生み出すことがゴールです。
3 年もやっていると、セミナーや講演の依頼を受けることも増え、GameBusiness.jp をきっかけにインサイドなど他の媒体でのビジネスが広がることも出てきました。「コミュニティへの貢献が新しい仕事につながる」というのは全く正しいようです。皆さんもぜひ、どうぞ。手っ取り早い貢献として、GameBusiness.jp では皆さんのような知識や経験をお持ちの方が、広くゲーム業界の方に知見を伝えるような寄稿や連載のご提案も待ちしております。ご興味のある方は是非ご連絡を(宣伝)。