【36】トレーニングを楽しく続ける 6 つのヒント

湊 和久

 「デッサン力」「プログラミング」「第二外国語」といった専門職の技能を維持したり、専門外の技能として新たに習得するには、積み重ねが大切です。この種の技能は、「勉強会に行った」「本を 1 冊読んだ」では身につかず、勉強や練習に時間をかける必要があります。

 アメリカの Pixar Animation Studios や DreamWorks では、社内にスクールやアートルームがあり、講習型の勉強も、デッサンのような反復訓練型の取り組みも、グループで実施されています。自分の専門性によらず、好きな授業に出ることもできるそうです。

 自習と集団で学ぶことと、誰かから教わること。この 3 つをうまく組み合わせれば、忙しい社会人でも新しいことを楽しく身につけることができそうです。

好きなことから勉強する

 興味のないことを続けるには、ある種の技術が必要です。

 「何を学ぶことが自分の人生の得になるのか」という視点では物事を継続できない方は、自分の気持ちを大切にして「何を楽しく学べるか」という視点を持って取り組んでみるのはどうでしょう。まずは職能との関連性や、周りの意見に左右されず、身につけたいことに前のめりに取り組んでみてください。やってみると、好きなことでさえ続けるのは難しいことに気づくと思います。次の 5 つは、続けるためのヒントです。

手を動かしながら本を使う

 新しいことに取り組む際に、まず本から買ってきて始めることが多いと思います。チュートリアル形式の本は、斜め読みして済ませるのではなく、実際に手を動かして本の内容を追ってみると、ほんの一日、二日の時間の投資で、基本的な知識や技能を手に入れられます。日が過ぎて忘れてきたときは、ふらふらと新しい本に手を出すのではなく、同じ本を使って復習することをお勧めします。短時間で、手軽に定着を強化できるはずです。

先生を見つける

 本を手に独学をすると、自分では解消しきれない多くの疑問が沸きます。ぜひ身近なところに先生を見つけてください。Maya の学習で行き詰まったら、仲の良いアートの人に聞く、などです。社内や社外で、お互いの得意分野を交換する関係を作っておくと、普段は独学で、詰まったら聞く、という良いトレーニングの形を作れます。

集まって勉強する

 独りで継続して取り組みを続けることが苦手な方には、仲間を作って勉強することをお勧めします。勉強会や読書会の形を通じて同志を集めるのがお手軽です。

アウトプットを持つ

 技能の向上や維持には小さくてもよいので自分のプロジェクトを持つことが大切です。誰にも見せないプロジェクトなら、他人や世間における価値を気にすることなく、実践を通じた訓練や経験を積むことができます。また、勉強したことを講義してみるのも良いアウトプットです。

短期間に集中してやってみる

 トレーニングを習慣化することは時間の問題があり、「何かを習慣化するコツは、引き替えに何かの習慣をやめること」という考えを持つ人もいます。そこで、365 日続けることをいきなり目標にせず、まずは「30 日間、毎日クロッキーを 30 分やる」「30 日間、この洋書を粗訳する」等と決めて、期間中はそれを最優先にして取り組んでみましょう。それなりの成果があり、毎日が楽しく、大きな達成感を得られます。

 続けていくと、「習得する」コツや「思うような速度で習得できないストレスへの耐性」が身について、普遍的な学習コストが下がります。その後は興味の幅を広げて、以前は気が乗らなかったことに取り組みやすくなるはずです。