【34】一輪車では遠くへ行けない

渡辺 雅央

はじめに

 この場をお借りして私が最近よく考えていることについて皆様にお伝えしたいと思っています。どんなことかと言いますと「違いを許し合う」「立場が違う考え方があるからこそお互いに成長できる」といったことに関してのお話となります。

 この文章は今ゲーム業界でご活躍中の皆様、ゲーム業界を支えてくださっている皆様、これからゲームクリエイターになろうと頑張っている皆様、ゲームに関わる全ての人に読んで欲しいと思っています。

ゲーム開発者、それぞれの立場と考え

 “コンソールゲームはもう終わり”、“今はソーシャルゲームの時代”、“スマートフォンの勢いが止まらない”、“日本のゲームは終わりだ”、“海外のゲームは 10 年進んでいる”、“大規模開発で AAA タイトルを狙わないと勝てない”、“インディーゲームこそ本来のゲーム開発だ”、“ゲームは売れなくちゃ駄目だ”、“売れるかどうかより面白いかどうかを考えろ!” などなどいくつもの立場と考えがあり、日々それぞれの陣営の意見が聞こえてきますが、皆様はどの意見が正しくて、どの意見が間違っていると思いますか?

正解は 1 つではないし、どちらの考え方も大切

 「正解は 1 つではない」、これはとてもずるい答え方なのかも知れませんが、私は心の底からそう思います。どうして正解は 1 つしか存在してはいけないのでしょうか。世の中には正解がいくつもあることがたくさんあると思います。どちらかだけしか許されないとなると、世界はとても窮屈でつまらない場所になってしまうのだと思います。対立してしまいがちな意見、一見どちらかしか正しくないと思いがちな意見ほど、実はお互いにさらなる成長をもたらす大切な存在なのです。指摘し合い学び合う、潰し合うのではなく意識し合う。自分自身のバランスを取るためにも多様性を受け入れることは決して悪いことではありません。

私たちはこれからどうすればいいのか

 正直な話わかりません。大切なのは今の世の中の流れを見ながら、自分自身の価値観として何を大切にするのか、誰にどんな価値を届けたいと思うのか。しっかりと意志を持って日々を歩むことだと思います。

 未来を予測しようとする方、ビジョンを語られる方はたくさんいらっしゃいますが、それがどれくらい当たったことがあるかは、皆様にも何となくわかることだとは思います。

 わからないからこそ、さまざまな意見に耳を傾けバランスを取ることが大切なのです。

これからゲーム業界を目指す皆様へ

 私を含め、たくさんの人がさまざまなアドバイスを皆様へ行うでしょう。そしてそれはどれも違い、そうなると人はどちらの意見が正しいのかと考えてしまいがちです。ですが、たいていの場合、どちらの意見も正解でどちらの意見も必要なのです。対立するものがあるからこそお互いに競い合い、共に高みに到達できるのです。ライバルが自分を強くするように、自分の持つ価値観と違う価値観が自分を成長させ、遠くに連れていってくれます。違う価値観を毛嫌いせず、なくなってしまえなどと思わず、深く観察してみましょう。

 一輪車では遠くへ行けないのです。