【63】ゲームと現実、現実とゲーム

田端 秀輝

 この文章は、ご自分が学生だと思う方は【A】→【B】→【C】→【E】と、社会人だと思う方は【B】→【A】→【D】→【E】という順番で読んでください。

【A】

 ゲームには、いろいろな種類の「楽しさ」が詰まっています。

 例えば、RPG が持つ楽しさのひとつに「成長の楽しさ」というのがありますが、これについて筆者が遊んだある RPG を例に少し突っ込んで考えてみます。

  1. 職業:忍者を極めたら武器が 2 つ持てる能力「にとうりゅう」を獲得した!
  2. 「 にとうりゅう」を使ったら攻撃力 2 倍で、今まで苦戦してた敵を瞬殺できた!!
  3. さらに職業:狩人の「みだれうち」能力と職業:魔法剣士の「まほうけん」能力を組み合わせたら攻撃力が 2 × 2 × 2 = 8 倍になった!!!!

 このように、「成長の楽しさ」は以下のような複数の段階に分解することができます。

  1. 獲得すること自体の楽しさ
  2. 実践することで体感する楽しさ
  3. 組み合わせを考え使うことで新しい世界を開く楽しさ

【B】

 筆者は SE として会社員生活をした後、退職してものづくり技術者養成の大学院に入学しました。そこでの学習の日々は 1 度目の学生時代よりも楽しく感じました。

 そこで、学ぶ楽しさについて筆者の学生経験を例に少し突っ込んで考えてみます。

  1. 設計学で「Design for X」†という、今まで知らなかった概念を学んだ!
  2. 「 Design for X」はシステム開発にも使える考えで、SE の自分にも使える!!
  3. 「Design for X」って「イノベーション論」や「プロダクトデザイン」と組み合わせればより具体的な話ができる。自分の世界が何倍にも広がっていく!!!!

 このように、「学ぶ楽しさ」は以下のような複数の段階に分解することができます。

  1. 獲得すること自体の楽しさ
  2. 実践することで体感する楽しさ
  3. 組み合わせを考え使うことで新しい世界を開く楽しさ

【C】

 【B】の[3] にあげた複数領域の組み合わせの有用性は、最初の学生時代にも教授に指摘されました。しかし【A】の話と並べることで、有用性だけでなく楽しさでもあることも見えやすくなってくるかと思います。このように、ゲームで用いられる表現や技術を用いれば、現実にある事象の楽しさを気づきやすく提示できるのではないでしょうか。

【D】

 【A】の[1][2][3] はゲーム特有のことではなく、実は【B】にあるように現実で得られる経験と同じです。現実にある楽しさを、ゲームの中で純化させた形で表現しているのです。

【E】

 ここで今までのことは忘れていただき、ご自分が学生だと思う方は【B】→【A】→【D】→【F】と、社会人だと思う方は【A】→【B】→【C】→【F】という順番で読んでください。

【F】

 お疲れ様でした。ではここで、【C】と【D】の話を思い出してください。

 【C】では、ゲームの楽しさで現実の楽しさを引き出す、という話をしました。一方【D】では、現実の楽しさをもとにゲームの楽しさを作り出す、という話をしました。

 『ゲーム→現実』なのでしょうか。それとも『現実→ゲーム』なのでしょうか。

 ゲームが世の中にあふれた今、どちらも十分あり得ることだと思います。むしろ、どちらも楽しくできるならば、それは大変幸せなことではないでしょうか。

 どちらが先と考えるより、両方の視点を持ち、どちらも楽しくすればいいんです。

 ゲームを作る人はぜひ、ゲームと現実、どちらも楽しくしちゃってください!