【23】「おもしろさ」とのつきあい
「おもしろさ」とは何なのか?
ゲームデザインを体系的に学ぼうとすると、必ず「おもしろさ」とは何なのか? という問題にぶつかるものだと思います。
実際の開発現場でも、めざす「おもしろさ」をチーム内で共有し、開発をおこなう必要があり、非常に重要な概念です。
しかし実のところ、「おもしろさ」とは何なのか? という問いには誰も明確な答えを用意できないのではないでしょうか。
その誰も説明できない「おもしろさ」を取り扱うことが、ゲームデザインを学ぶ上での難しさだと思います。
「おもしろさ」へのアプローチ
「おもしろさ」そのものを語っても実用上の価値はそれほどありません。しかし、実際の開発では「おもしろさ」にアプローチする必要があります。その手法として自分は“「おもしろさ」がどんな仕組みから生み出されているかを知り、求められる「おもしろさ」に近いパーツを参考に、新しい仕組みを創造する” というアプローチが有用であると考えています。
そのためには、仕組み(ルール)に対してユーザーはどのような反応をし、どのような「おもしろさ」が生まれるか、という一連のセットを蓄積していく必要があります。
また、そのセットは適切に分解されていないと実用的ではありません(「『FF』はファンタジー世界を体験できるから面白い」、というセットでは『FF』以外のゲームを作る際には使えない)。
ビデオゲームは当然おもしろいものですが、要素が積み重ねられたものが多く、その分解には手間も能力も必要になります。
反して、ボードゲームは要素が絞られたものが多く、「おもしろさ」の要素を知るには手間や効率の面からも有効であると自分は考えています。
ボードゲームから抽出する「おもしろさ」を発生させる仕組みのサンプル
- 例 1:衝突による効果の無効化(『ハゲタカの餌食』など)
仕組み:他人と同様の行動を行うと、両プレイヤーの行動が無効になる。
反応 :ユーザー同士が他人の行動を意識する。/他人の残りリソースを意識する。
面白さ:行動の際の緊張感が高まる。/他プレイヤーと遊んでいる意識が強くなる。 - 例 2:得点の明示+攻撃要素(『カタン』など)
仕組み:現在の得点を公開情報とする。/特定の条件で他プレイヤーに攻撃できる。
反応 :現在のトップに対して攻撃を行う。
面白さ:試合が拮抗し、一人勝ちの展開になりづらい。 - 例 3:低確率における再行動(『グリード』など)
仕組み:低確率で発生する特定の状況において、行動権が復活する。
反応 :挑戦すべきか否かの判断を行うようになる。/負けているプレイヤーが一発逆転を狙う。
面白さ:最下位のプレイヤーでもモチベーションが下がりづらい。/リードしても油断できず最後までゲームを楽しめる。
もちろん、これらは一例でしかなく、他にもいろいろなゲームがあり、色々な仕組みが存在します。
ボードゲームはその仕組み自体がゲームとなっているものも多く、ダイレクトに「おもしろさ」とその要素を拡充できるという利点があるかと思います。
ボードゲームのすすめ
ボードゲームは「おもしろさを知る」上で、非常に有益な勉強道具です。
不確定な「おもしろさ」をチームと共有するため、自分の知る「おもしろさ」を広げるため、色々な場面で役に立つかと思います。
もちろん、小難しいことを考えず、プレイするだけでおもしろいものでもあります。
興味を持たれた方はぜひ、シンプルで奥深いボードゲームの世界を体験していただければ幸いです。