【19】体験型エンターテインメントの可能性

澤田 典宏

 2011 年頃から、ARG(Alternate Reality Game/ 代替現実ゲーム)や、体験型謎解きイベントといった、現実を舞台とした体験型エンターテインメントが注目されています。私からはイベントだけでなく、地域おこしや教育、O2O †への応用など、幅広い可能性を持つ体感型エンターテインメントの形式や実例についてお伝えします。

ARG(代替現実ゲーム)と体験型謎解きイベント。似て異なる 2 つの形式

 最初に体験型エンターテインメントを代表する 2 つの形式††「ARG」「体験型謎解きイベント」を比べ、両者で違いがあることを明らかにします。

似ている部分

  1. プレイヤーに提供する体験
    ARG、体験型謎解きイベント共に「非日常的な体験」を提供することが多い。
  2. ゲームのルール
    ARG、体験型謎解きイベント共に良識を暗黙のルールとしている。ゲーム内での犯罪が通報されないのはゲーム内のできごとという暗黙のルールがあるため。

異なる部分

  1. ゲームの舞台
    ARG:インターネットを接点とした現実上の非日常世界体験型謎解きイベント:イベント会場(現実)内に設けられた非日常世界
  2. 実施形態と期間
    ARG:オンラインゲーム型で長期(1 週間から 1 年)体験型謎解きイベント:演劇興行型で短期(例:2 日間で 6 公演)
  3. ソーシャル性
    ARG:インターネットを接点とした間接的な交流(協力)体験型謎解きイベント:イベント会場内での直接的な交流(協力)
  4. 収益方式
    ARG:スポンサーからの制作費が主。自主興行はない体験型謎解きイベント:チケット販売による運用が主。自主興行が多い

 ここでのポイントは、ARG が「インターネットを接点に幅広い地域や時差のプレイヤーが参加できる仕組み」を重視しているのに対して、体験型謎解きイベントは「特定の場と時間を共有できるプレイヤーが楽しめる仕組み」を重視しているという点です。

体験型エンターテインメントの実例と可能性

 次に、2012 年度に実施された体験型エンターテインメントを実施目的別に記載します。先に挙げた形式の違いが実施のしやすさにもつながっている点にも注目してみてください。

 近年の体感型エンターテインメントの盛り上がりは、比較的制作しやすい体験型謎解きイベントが普及したことにつきます。ですが、その市場規模は 2012 年度で 10 億円前後と推測され、今後はいかに多くのプレイヤーが同時に遊べるか、その設計が市場拡大のカギを握るでしょう。一方で、ARG はインターネットにおけるプレイヤーの拘束のしにくさや、収益化のしにくさをどう解決するかが形式継続のカギになると考えます。