【15】海外市場をあきらめない

稲葉 治彦

 ゲーム業界に身を置き、海外向けにゲームを販売する周辺業務に携わってちょうど 20 年になる身として、個人や小中規模のデベロッパー発のゲームアプリを見ていて「もったいない!」と思うことがたびたびあります。ゲームの完成度も高く、ゲームの内容もおもしろく、Apple の App Store も Google の Google Play も海外にゲームアプリをリリースする障壁は家庭用ゲーム機向けとは比べものにならないくらい簡単なのに、なぜか世界につながる施策を取っていないゲームアプリが多々見られるからです。こういった状況を少しでも減らすために、海外市場をあきらめないゲームアプリ作りのヒントを紹介します。

ヒント 1:とにかく翻訳してみよう

 とにかく一度英語に翻訳してみて、英語版にアクセスしてくる海外のユーザーの傾向を見た上で、英語の次に翻訳対応する言語を決めても遅くはありませんし、海外市場にどれだけコミットするのかを決めても遅くありません。英語版、そしてその先の多言語対応を考慮して、メッセージはプログラムコードに直接書き込んだりするのではなく、Excel などの表計算ソフトでユニーク ID やそのメッセージが使用される状況などのコメントを記載して作成しておくと、翻訳者との素材のやりとり並びに翻訳成果物のプログラムへの組み込みがやりやすくなります。

ヒント 2:日本的すぎるかどうか考えない

 ゲームアプリの内容が日本的すぎることを気にして海外販売を躊躇するケースがあるようです。かりに日本的すぎる内容あるいはジャンルだとしても翻訳対応がされていれば、そのゲームアプリのおもしろい部分が伝わる可能性はあります。その可能性をゲーム開発者が信じられるのであれば、そのゲームを海外向けにリリースする価値はあるのではないでしょうか?

ヒント 3:グラフィックはそのままで大丈夫

 グラフィックが日本的なドット絵でも、萌え系イラストでも、ゲームがおもしろければ気にする必要はないでしょう。外国の人気デベロッパーのゲームアプリでも、日本の RPG 風ドット絵を使っているゲームアプリは多々あります。また日本的なグラフィックが、かえってセールスポイントになる場合もあります。もちろんゲームのテーマに最適なテイストのグラフィックであるに越したことはありませんが、グラフィックを変更する費用と、海外向けリリースを天秤にかけるなら、海外向けにリリースすることを優先すべきではないでしょうか?

 と、ここまで 3 つのヒントを紹介して来ましたが、一番大事なのは「とにかく出してみる」ということです。打席に立たなければ空振り三振もないかわりに、ヒットもホームランもありません。アプリマーケットで結果を出すのは確かに App Store オープン時に比べれば難しいかもしれませんが、打席に立たない限りは何も起きないという条件は変わっていません。多くの時間と労力と情熱を注いで開発したあなたのゲーム、折角ですから少しでも多くのゲームプレイヤーに遊んでもらったほうが、ゲームも喜ぶのではないでしょうか?

 特に最近海外ではインディーゲームがある意味で「ブランド化」しており、インディーゲームでも商業的に大きな成功を納める土壌が海外市場では確実に育っています。この好機を逃さないよう、1 タイトルでも多くのゲームが日本から海外市場に向けて羽ばたいていくことを楽しみにしています!