【91】英語学習を「ゲーム」にしよう

矢澤 竜太

 僕はゲーム業界に入る前は翻訳者でした。当時はゲーム好きの一人として、ゲーム開発関連の英語記事を日本語に翻訳して公開していました。その時のモチベーションは「とても有益そうなことが書いてある。僕が訳したこれが、僕が大好きなゲームを開発してくれる人の役に立つかもしれない」、それだけでした。アクセスログを見て、企業内サイトからのアクセスがあると勝手に喜んでいたものです。このような活動を続けているうち、直接開発者の方とお話する機会にも恵まれ、どんな情報が求められているのかを直接聞く機会も得ることができました。そして自身のアンテナ精度も向上し、定番の Gamasutra.com から projecthorseshoe.com、あるいは様々なゲーム関連メディアの記事など、「紹介したい情報」は雪だるま式に増えていきました。そして貯まる一方の「次に訳す記事リスト」を前に、ある時僕は悟りました。

 「これは人が翻訳して間に合う情報量・スピードではない」と。

 だから、ゲーム開発者の皆さんが英語を学ぶ方法を提案したいと思います。はい、とっても自分勝手な理由ですね(笑)。

 ゲーム開発者にとっての英語は、有用な情報を、より深く、より広く、より早く入手する「ツール」です。それ以上でも、以下でもありません。自分で一次情報に当たることができれば、より多くの選択肢を得る事ができ、より良いものを作る手助けになるでしょう。英語に限らず、新しいツールの扱い方を学ぶのは面倒臭いですが、僕らはいつだって必要に迫られてそうしています。英語なんか、すんげえ便利な API とか、プラグインだと思えばいいんだと思います。苦手意識を持つ必要なんてありません。大事なのは「ツールを使って得られる結果」で、それを求めるからこそ学習を始め、結果としてツールの扱いに習熟すればいいのではないでしょうか。

 学習をするのであれば、定期的に肯定的な反応が受けられる(ポジティブフィードバックのループ)学習法デザインにするのが好ましいと思っています。英語学習をゲームにしてしまうのです。良質なゲームは長く遊べます。楽しくないゲームは途中で止めます。学習の手応えを感じる場所を確保することは、学習自体と同じくらい大切です。自分にとって「成果の確認プロセスが楽しい」やり方を模索してください。累計学習時間を記録する、月イチで英会話カフェに遊びに行く、TOEIC を受けるなど、さまざまなミッションを用意して、その結果に一喜一憂してください(たまにはヘコむのも、よいアクセントだと思います)。成果を感じた時は、思いっきり喜んでください。最初はフリでも、脳は割と騙されてくれます。

 例えば、

と設定したら、タスクが終わるたびに自信を蓄え(レベル上げ)、小目標で「今日は全然話せなかった……」と時に挫折し、スコアが 50 点上がったとお祝いし(中ボス戦)、そのループを続けた結果 GDC で質問したりして(ボス戦)、ある日自分がすべてをクリアしていることに気づく、そんな感じです。

 ポイントは、必要性に心底納得することと、いちいち楽しむ/悔しがること、そして自分の人生というリソースをどこまで割くのかをきちんと決めること、この 3 つです。あとは苦しみ楽しんでいれば勝手にハマる、楽しいゲームになるはずです。

 ハッピーラーニング!