【73】怒れるアーキテクトとしてビジネスと対立するな

チャド・ラヴィーニュ

 アーキテクトとしてキャリアを重ねていくと、多くの問題が繰り返し現れていることに気付くときがきます。プロジェクトや対象の産業は変わっても、問題の多くは同じようなものなのです。これがわかると、経験を活用して多くのソリューションを手早く片付け、難しくてやりがいのある課題を楽しむ時間が作れるようになります。自分のソリューションには自信が持てますし、言った通りのものを提供できます。ついにホメオスタシス、すなわち恒常性に達したのです。

 これはまさしく、大失敗にはおあつらえ向きのタイミングです。たとえば、自分の知識を過信して、話を聞くよりも話をすることに夢中になったりしていませんか。この馬鹿げた勘違いには、大抵いやなおまけが付いてきます。技術その他に優れた理解を持つあなたに、あえて反論を挑む愚かな人々に対して抱いてしまう皮肉や短気、そして怒りなどです。

 自己過信が度をすぎると、ビジネスの人々に尊大な態度を取るようになります。そんなことをすれば、あなたのキャリアは、クロサイと絶滅時期を争うことになるでしょう。ビジネスは、私たちの存在理由です。こう言うと、少し自尊心が傷つくかもしれませんが、この事実を見失ってはなりません。私たちは彼らにサービスを提供するために生きているのであって、その逆ではないのです。

 私たちを雇っているビジネス側の話を聞き、理解することは、問題を解決するための重要なスキルです。自分の言いたいことを言いたいために、ビジネスアナリストが話し終わるのをイライラと待っていたことはありませんか。きっと、相手はあなたの話に同調してくれなかったでしょう。ビジネスドメインのエキスパートにも、あなた自身が求めるのと同等の敬意を示さなければなりません。あなたは彼らにだけは、近づきにくい人間だと思われてはいけないのです。彼らがあなたを避けるようなら、あなたはコミュニケーション崩壊のきっかけを作り、自分で自分のチームを壊しているということです。

 自分が話しているときは、自分がすでに知っているようなことしか耳に入りません。しかし、「自分が賢いので、他の誰にも価値のあることを言えない」などと見えないようにすることです。

 人の話に耳に傾けていると、耳に入ってきたビジネスの進め方の説明に対して、それはよくないと思う場合がたびたびあるでしょう。それはかまいません。改善のヒントを言ってかまいませんし、是非言うべきです。しかし、いくら言ってもビジネスが変わらず、ビジネスの進め方に賛成できないままなら、これは困ったことです。

 このような場合、会社の仕事のまずさを面白くいやみな感じで話して人目を引こうとする不機嫌な天才を演じてはなりません。周囲の人は、あなたの言う通りだと思ったりはしないでしょう。彼らは以前にもそういう人間を見ており、本当にうんざりしています。優れたアーキテクトになるために大切なことは、仕事に情熱を傾けることです。さまざまな怒りで熱くなりすぎるのは決してよいことではありません。

 意見の不一致を受け入れて仕事を進めることを覚えましょう。もし、相手との違いが大きすぎてビジネスサイドにいつも居心地の悪さを感じるようなら、あなたにとって居心地のよい会社を探して、その会社のためにソリューションを設計しましょう。どのような方法であれ、ビジネスとよい関係を結び、あなたのエゴで関係を損ねないようにすることです。そうすれば、あなたは今よりも不満が少なく、生産性の高いアーキテクトになれるでしょう。