【94】ビジョンを共有する

ジャレッド・リチャードソン(Jared Richardson)
アメリカ、ノースカロライナ州モーリスビル

 あなたは愚か者と仕事をしていますか? あなたのチームメンバーは会社を破産させたいと思っていますか? そう感じるときもありますが、通常はそんなことはありません。本当はみんな成功したいし、貢献を誇りに思っています。どれだけプロジェクトをサボろうとしているように見えたとしてもです。みな自分が正しいと思うことをしているのですが、何が「正しい」のかは人それぞれなのです。

プロジェクト・マネジャーとして、みんなを協力させるにはどうすればよいのでしょうか? ほとんどのチームが暗闇のなかで仕事をしているのだということを知るべきです。なぜこのプロジェクトが重要なのか、会社のもっと大きな戦略にどのように関係しているのか、なぜ締め切りが 6 月 17 日なのか、チームのほとんどは知りません。なぜそういう決定がなされたのかを理解していないので、その決定は気まぐれで理不尽なものに見えてしまいます。役に立つ明確な情報が何ひとつないのに、先の見えない状況から何とかして明確なビジョンを作ろうと、全員が苦労します。同じプロジェクトなのに全員がバラバラな最終目標を見ているのは奇妙なことです。

 この霧を晴らすためには、共通の取り組みに関する重要な情報をチームメンバーと共有する必要があります。この 3 週間で市場に出てくるはずの競合製品に対抗するために、このプロジェクトは 6 月中旬に出荷する必要があるということを知らせましょう。このプロジェクトは全世界展開するという大きな企業戦略を満たすものだということ、顧客が既存の古くなったプロダクトラインから得られる利益の減少を立て直すために、このプロジェクトに期待していることを伝えましょう。

 もしあなたが情報共有に慣れていないなら、よく注意しましょう。チームに関する情報のパイプ役として、あなたはチームのモラルづくりにも影響を与えます。あなたが他のグループやマネジャー、自分のチームメンバーについて不満を漏らすと、あなたのその否定的な態度はインフルエンザのようにすぐにチームに広まります。そして、ウイルス感染と同様、何日もチームの勢いを削いでしまうのです。

 毎日ミーティングを開くことは、プロジェクトに関する情報を共有するすばらしい方法です。10 名ほどのチームであれば 10 ~ 20 分ほどで効率よくミーティングできるでしょう。チームに対して、自分の最新進捗と、必要に応じて助けが必要な問題について説明する機会が各自 1 ~ 2 分与えられます。こうした簡単な「スタンドアップ」ミーティングは、プロジェクト・マネジャーがプロジェクトのアップデートを共有するのに最適な場となります。

 毎週(あるいは毎月)のミーティングだと、重要な情報を伝え忘れてしまうおそれがあります。結局のところ、最終的に全員が集まるときには、あなたにとっては古い情報になっているのです。あるいはリスクの共有が遅れたために、防げるはずの問題が大きくなることもあります。また、17 ビットの「致命的な」情報を、ひとつの大きな会話の中に詰め込んで共有しても、チームにはわからなくなるでしょう。

 あなたのチームはもちろん、会社にいる全員が成功したいと思っていることを覚えておきましょう。ビジョンを共有してください。ほかの人にもビジョンを共有するよう頼みましょう。会社をダメにしたがっている愚か者だと思っていた人たちのほとんどは、相互理解することによって、実際にはチームの課題を解決しようと力を合わせて取り組んでいる仲間だということがわかるでしょう。