【87】これからゲーム開発を学びたい人へ~一日型ハッカソンのススメ~

弘中 大介

 短期大学で「ゲーム開発」を通してプログラミング教育を担当する者として、これまで多くの学生を受け入れてきましたが、ゲーム開発に必要なソフト、ハード、資料は安価または無料で手に入れることができるにも関わらず、挑戦できていない学生が多いと感じています。理由を尋ねると「調べたけどわからなかった」という回答が多いのです。

 まずは、とにかく調べること! 情報とソフトはいくらでも手に入ります。諦めてはいけません。手当たり次第に調べ、何となくで良いので理解することが最初の関門です。

 次に、作るべきゲームにも罠があります。多くの場合、初めてにも関わらず「大きなゲーム」を作ろうとします。まだゲーム制作の初心者にもなっていないのに、理想のゲームを作ろうとしても不可能です。初めてのゲーム開発でつまづくと、次のチャレンジが辛くなります。最初は「完成させる」ことを第一に考えましょう。

 そこで、「自分の知っている小さなゲーム」を企画します。しかし、制作途中で「こう変えよう!」や「別のゲームを思いついた!」という誘惑が始まります。これに負けると、完成せず、飽きてしまいます。あなたにとって重要なことはまだ「完成させる」ことなのです。小さなゲームの開発を繰り返しましょう。これが重要なのです。

 初めのうちは短時間での制作を繰り返すことが大事です。完成しないとモチベーションが下がります。モチベーションの維持のためには繰り返し完成を経験することがよいのです。そのためにお勧めなのが「一日型ハッカソン」†です。その中で小さな目標を設定します。たとえば、プレイヤーを動かす、弾を発射する機能など単純なものです。それを一日で一気に作成するのです。これを定期的に実施していきます。

 こうして、基本を身につけることができたら、小さく、単純なゲームに挑みます。一日でゲーム制作なんか無理! と思うかも知れませんが、実際に制作経験のなかった学生さんが、この手法でゲーム制作ができるようになりました。

 結果のすぐに出てくる一日型ハッカソンには達成感があります。人は失敗するよりも成功するほうがモチベーションが維持されます。そして、自分一人ではなく周りの人もハッカソンに誘いましょう。他の参加者がいることの緊張感が否が応でもあなたの集中力を上げるのです。

 筆者はこの一日型ハッカソン「八耐:八時間耐久作品制作会(仮)」を主催し、毎月開催しています。そこにはプログラマーだけでなく、デザイナーやサウンドクリエイターを目指すアマチュアや学生、さらにはそのプロとさまざまな方々が集まり、適度な緊張感の中で自分なりの一日の目標に挑戦しています。

 八耐ではルールはありません。ただ八時間制作を共にし、最後にお互いの成果を発表し合うだけです。一日型は誰でも無理なく参加できるため、人を誘いやすく定期開催していると参加クリエイターが増え、人脈も広がります。ゲーム開発未経験や経験の浅い参加者は小さな目標のために、プロや経験豊富な参加者は、日頃、なかなか手を付けられない新しい技術の学習やプロトタイピングの場として利用しています。このように初心者から経験者、プロに至るまでさまざまな形で一日制作に打ち込める雰囲気を共有したい人々は多いのです。

 一日型ハッカソンを始めると、自分のスキルアップだけでなく、コミュニティも広がります。これからゲーム開発を始める人も、すでに経験済みまたはプロの人にもオススメです。ぜひ一日型ハッカソンを開催してもらいたいと思います。