【52】遊び続けてもらうゲームデザイン

岡本 基

 当社はゲーム専用機向けのパッケージゲームから Free to Play(基本無料。以下、F2P)のソーシャルゲームまで幅広く手がけています。この記事では F2P のゲームをデザインする際、大切なポイントを簡単にまとめてみます。

 ここでいう F2P のゲームは「ゲーム内に財産を築き上げるゲーム」を指します。財産とは「お金に相当する価値あるもの」や「プレイログやセーブデータ(キャラクターのレベルやステータス等)」に加えて、すぐに換金できないようなもの、例えば、ゲームプレイヤーの間で通用する「名誉」、一緒に遊ぶ友達や仲間との「人間関係」、ゲームプレイを通して得た体験の「思い出」も含みます。

 プレイヤーは無料で手軽にゲームを遊び始め、遊んでいる間に自然とゲーム内に財産が溜まっていきます。ゲーム内の財産が溜まれば溜まるほど、強い愛着を持つようになり、ゲームから絶えず離れないようになります。成功している F2P のゲームはどれもそのサイクルをうまく作り上げています。

 ゲームのサイクルは大きく 4 つのステップに分けられます。

  1. 遊ぶ目的
  2. 遊ぶモチベーション
  3. モチベーションを実現する手段
  4. さらにモチベーションが高まる仕組み

 プレイヤーに明快な目的を提示し、ゲームを先に進めるモチベーションを与え、モチベーションを実現する手段を提供します。その手段はゲームのテクニックだったり、他のプレイヤーとの協力だったり、課金だったりします。そして最初のモチベーションが満たされた時点で、もっと続けたくなる動機づけを行うことで、ゲームを継続的に遊んでいただけます。

カードゲームの実例

 具体的にモバイルゲームで非常に人気の高いカードゲームを例にとってみます。

  1. 遊ぶ目的:強いカードを集める
  2. 遊ぶモチベーション:強いカードがあれば……他人に自慢できる、他人に勝てる!
  3. モチベーションを実現する手段:
    1. 携帯の 5 ボタン連打のクエストでドロップするカードを取得する。
    2. 対戦で相手に勝ち、欠片アイテムを奪い、欠片を揃えて、レアカードを獲得する。
    3. 有料ガチャで手っ取り早く強力なカードを入手する。
    4. カード同士を合成して、カードの戦闘能力を育てる。
  4. さらにモチベーションが高まる仕組み:
    1. バトルイベント等でライバルに出会うことで、勝つためにもっと強いカードデッキを作る必要性を実感する。
    2. イベントでランキングのより上位をめざしたくなり、ボスを倒すための特別な性能を持ったカードを欲しくなる。
    3. 所属しているギルドが対戦相手のギルドに勝利するため、より強いデッキを求め始める。

運営とは遊び続けてもらう工夫の積み重ね

 運営の仕事は、前述のゲームサイクルがきちんと機能しているかをチェックし、メンテナンスし続けることです。設計の段階で矛盾があったり、設計通りに実装できていなかったり、バランス調整が破たんしている場合もあります。

 オンラインゲームは常にゲームが変化し続けます。運営開始時点では素晴らしいバランスであっても、参加するユーザーが増え続けていくと、それに応じたバランス調整を行う必要が出てきます。ゲーム内のコンテンツを遊びつくして飽きてしまう恐れもありますし、上級者と初心者の差が拡大して、新しいユーザーが参加しにくいゲームになってしまう恐れもあります。運営は飽きが来ないよう、常に新しいコンテンツを投入し続けたり、ユーザーの順位付けが適度に変動しやすいように、バトルの場に刺激を与え続けたりする必要もあります。

 運営とは、プレイヤーに遊び続けてもらう工夫を日々積み重ねることに他なりません。