【46】真のグローバル人材になるために

伊藤 周

 私が属しているユニティ・テクノロジーズ社は社員数そのものは多くないのですが、世界中に散らばっており、いわゆるグローバル企業です。そこで得た「真のグローバル人材」の私見を述べさせて頂きたいと思います。

 ところで、皆さんの英語レベルはどのぐらいでしょうか。

D:英語まったくできませんレベル
Google 翻訳バンザイ的な。英語の技術ドキュメントがあると拒否反応を示します。これではさすがに業務に支障が出るので、もう少し頑張りましょう。
C:英語が読めるレベル
ゲーム開発者、とりわけプログラマーはこのレベルの方が多いです。正直なところ日常ゲーム開発業務をしていく上では、このぐらいのスキルでほとんど困ることはありません。
B:英語のメールが打て、英語で日常会話ができるレベル
文章では英語でコミュニケーションできるということです。要はヒアリングとスピーキングが不得意という。私はこのレベルです。
A:英語でコミュニケーションが一応できるレベル
GDC 等の海外のセミナーを受講できるレベルです。ヒアリングはおおむね OK ですが、スピーキングに関しては NG な方。結構こういう方は多いと思います。S:英語で議論ができるレベルはっきり言って日本のゲーム開発者においては皆無です。もしこのレベルのゲーム開発者がいたらユニティ・テクノロジーズ・ジャパンまでご連絡ください。

 Sのレベルの開発者は日本ではごく稀です。一方、非ネイティブのヨーロッパでも開発者は英語が話せて当たり前ですし、中国や東南アジアでもゴロゴロいます。つまり国内外のゲーム開発者で英語に関して、かなり差が開いているのが現状です。

 ただし、以下の講演動画でもあるように、

 「ジェイ・ウォーカーが語る世界の英語熱」( http://www.ted.com/talks/lang/ja/jay_walker_on_the_world_s_english_mania.html

 一歩世界に出て、何らかの問題解決をするときは必ず英語です。英語圏でなくても英語で問題解決をします。いくら日本人が日本語をプッシュしてもこれは揺るがない事実です。

 英語で議論できるということは、ただ単にコミュニケーションができるというだけではありません。世界中で問題を解決できる、ということです。つまり、問題解決をする道具として英語が必要不可欠なのです。

日本人ならではの武器を活かそう

 しかしただ単に英語が話せればいいかというと、そうでもありません。英語ができる開発者は世界中にはゴロゴロしているからです。我々は最大の武器を使わなくては損です。

 日本人が生まれながらに持っている武器、それは「日本人」ということです。

 日本人であるだけでメリットがたくさんあるのです。

 まず、日本にはまだ世界に名だたる大企業がたくさんあることです。そしてそこに対し、積極的にアクションできるのは日本人だけです。日本人はやはり、日本人を信用するものです。他の国から見れば、排他的に見えるでしょう。要は、日本は江戸時代の鎖国状態と同じなのです。あなたが長崎の出島になれば、それだけ重宝されるということです。

 他にも、多様な文化を生み出すバックボーンがあるということもメリットです。『ドラゴンボール』『スーパーマリオ』を生み出した国に属している、それだけで尊敬されるのです。ゲーム産業に属しているのであればなおさらでしょう。

 つまり、単に「英語ができるようになって海外で仕事しよう」ではなく、「日本人ということを自覚し、日本と世界を結ぶハブとして仕事しよう」ということです。これこそが真のグローバル人材なのではないかと思います。

 B レベルの不肖の私がアドバイスさせていただくと、大事なことはひとつだけ。

 「下手な英語でもいいから話す」

 これだけです。そして、たとえ人が下手な英語で話しても、笑わないことです。海外にいくと、下手な英語で自信を持って話している非ネイティブの人たちはたくさんいます。それでもいいのです。文法も最初は適当でも構いません。とにかく、話すこと、コミュニケーションを取ることが重要なのです。

 英語は気合いです。一緒に頑張りましょう。