【31】SIGGRAPH Asia の楽しみ方

立福 寛

 皆さんは SIGGRAPH Asia というカンファレンスをご存知でしょうか? こちらは名前のとおり、世界最大の CG のカンファレンス SIGGRAPH のアジア版で、2008 年からシンガポール、香港、韓国、日本などで行われています。本家の SIGGRAPH は CG 学会の最高峰と言われるレベルですが、開催地がアメリカのため、参加費が最低でも 40 万円以上必要になります。一方の SIGGRAPH Asia は日本の近くで行われるので、参加費は三分の一程度で済みます。近年はセッションの品質が同じくらいになってきており、大変コストパフォーマンスの高いカンファレンスと言えます。今回はこの SIGGRAPH Asia の魅力について紹介してみたいと思います。

 SIGGRAPH Asia の一番基本となるセッションは「コース」です。こちらは 1 つのトピックに関して 1 人以上の発表者が講演を行います。CEDEC などの講演と近いスタイルと思ってもらえれば大丈夫です。内容は数学、CG 理論、AR、OpenGL、VR、プリビズなど古典的なものから最新の研究結果まで一通りそろっています。いくつかのコースは入門編から開始するので、初心者でも参加しやすいと言えます。ただし講義時間が比較的長いので、最初で合わなかった場合は無理をせず他のセッションに移動したほうが無難です。大半のコースは「コースノート」と呼ばれる講義ノートが公開されるので、事前に読んで予習したり、後で復習に使うことができます。

 「テクニカルペーパー」はいわゆる学会の論文発表です。SIGGRAPH は CG 業界の最先端の研究発表の場で、ここで論文発表を行うことが研究者としての最高のステータスと言われています。SIGGRAPH の空気を一番味わえるセッションではあるのですが、内容が内容だけに、事前に論文を読んでおかないと理解するのは大変難しいです。論文を軽くチェックして内容を理解できそうなものに絞って受講するのがよいでしょう。

 「スペシャルセッション」では海外の映像プロダクションのプロデューサーやディレクターがその年に製作された映画のメイキングを細かく説明してくれます。公開されない製作現場の映像等も見られるので大変有益ですし、VFX が好きな人にはたまらない内容となっています。以前の SIGGRAPH Asia ではセッション数が少なかったのですが、最近はメジャーどころのスタッフが講演をしてくれるようになりました。ここは参加費用に対して、大変コストパフォーマンスの高いところだと思います。映画を事前に見ていることが前提で講演が行われるため、参加前には一通りの映画をチェックしておく必要があります。DVD のリリースを待っていると間に合わないことが多いので、取り上げられそうな VFX のすごい映画は公開時に映画館で全て見ておきましょう。

 最後は気になるお値段についてです。開催地や為替によって前後するので一例として 2012 年のシンガポール開催時の経費を紹介しておきます。ちなみに知人と 2 人でツインルームを使ったときの値段になっています。海外旅行の場合、1 人だとかなり割高になってしまうので、もう 1 人仲間を探すとよいでしょう。ホテルは安いところもありますが、会場に毎日通うことを考えると多少高くても近場を探したほうが無難です。

 10 万円台後半で世界最高レベルのカンファレンスに参加できると考えるとお安いほうではないでしょうか。CG の勉強をするには最高の機会ですので、興味のある方は参加してみることを強くお勧めします。