【11】オープンハードがもたらすインディーゲーム新時代

一條 貴彰

2013 年は日本のインディーゲーム元年です

 早春の「Bit Summit」を皮切りに、GDC での「LA-MULANA」開発スタッフによる講演、東京ゲームショウでの「インディーゲームコーナー」設立など、日本国内でインディーゲームが一気に盛り上がっています。

 海外の「Indie Game」ムーブメントは 2008 年ごろから始まり、配信プラットフォームの充実とも相まって大きな発展を遂げてきました。かわって日本には、もともと「同人ゲーム」というコミックマーケットを主軸とした非法人によるゲーム開発や、「フリーゲーム」の文化がありましたが、そこに加わる新たなフィールドとして「日本のインディーゲーム」が立ち上がってきています。

 同人とインディーは「作りたいゲームを作る」という目的は一緒です。両者はコミケ文化圏内で趣味の範疇として楽しむか、世界中で遊んでもらうために積極的にプロモーションして、商業化も見据えるか、という開発者のマインドが異なっているにすぎません。海外にも同人に近いポジションは存在すると思っています。

 一般的に日本では、ゲーム開発はゲーム会社に就職できた者だけの限られた既得特権であると誤解されていました。しかし、iPhone と AppStore の登場が第一波、Unity の普及が第二波となり、自前で「作りたいゲームを作る」ことを多くの人が再発見し始めています。

 ゲーム産業の中で見ても、大企業で指揮をとっていた著名なクリエイターや中堅開発者が独立し、ミドルコアなタイトルを開発するようになりました。また中小開発会社は自社パブリッシュのブランドを立ち上げ、PlayStation Network やニンテンドー e ショップなどで配信するスタイルが増えています。同時に、ゲーム産業内で培われた経験とノウハウは、オープンな開発環境を通じて誰でもアクセスできる形で共有化が進行しているのです。

オープンなゲームハードの普及が未来へのカギ

 海外と異なり、一般 PC ゲームに比較的なじみが少なかった日本では、インディーゲームは普及しにくいところがありました。そこに、オープンなゲームハードの登場が道を開きます。「OUYA」や「NVIDIA SHIELD」、加えて既存のゲームハードも「PlayStaionMobile」の取り組みに見られるようなオープン化が進行しつつあります。

 ゲーム専用ハードの大きなメリットとして、コントローラによる物理的アドバンテージに加え、プレイヤー側にゲーマーたる期待とリテラシが担保されているという点があります。オープンプラットフォームといえばスマートフォンなのですが、「老若男女にゲームが届く」ということは、ゲームデザインにおいて時に制約になります。あなたが「モニタの前に座ってコントローラを握る」熱狂的ゲーマー向けのゲームを作りたい場合、「OUYA」のようなオープンなゲームハードは日本の事情とかなり相性がいいのです。

 近未来、オープン化したハードが主流になると、ゲーム産業とインディーゲームの境目は曖昧になり、音楽におけるアーティストとレーベル、映画における配給会社とスタジオのような関係に変わっていくものと考えています。

 大小さまざまな規模のデベロッパーが各々の特色でタイトルを作り、パブリッシャーが全世界への販売チャネルやマーケティングを提供するスタイルに置き換わっていくことでしょう。妄言に過ぎるでしょうか? 日本でも、すでに「PLAYISM」がインディーゲームのパブリッシングサービスを提供しています。今後はこの新しいスタイルがどんどん広がっていくものと思っています。

ゲーム産業に関わる全てのみなさまへ:自分のゲームを作ろう!

 私は趣味として同人ゲームサークルで、レベルデザイン(もどき)をしています。そういう意味ではインディーゲーム開発者の端くれです。ノンプログラマーでしたが、最近やっと Unity で 1 本ミニマムな「OUYA」向けゲームを完成させることもできました(ひどい出来でしたが……)。

 開発環境も提供環境も揃いつつある今の時代、みなさんには手を動かすか、動かさないかの違いしかありません。今後のゲーム産業の急激な変化に対処する方法は極めてシンプル。今すぐ「自分のゲーム」を作り始めましょう!