【55】スピードこそが重要

竹内 将典

 ゲームを制作する際にクリエーターが考えるべきこととは何でしょうか? 本当にたくさんの、そして複雑な要素があると思います。皆さんは自身で考えられたことを実現するのが自分のみでは難しい場合、他人へ協力を求めるでしょう。もしくは、会社に所属されている方なら、決定権を持った上司、プロデューサーにプレゼンテーションを行い、ゲーム制作を行う具体的なプロジェクトとして成立させなくてはならないでしょう。その際、クリエーターは、もちろん面白いゲーム(の仕組み)を考えているでしょう。しかし、そのアイディアに OK の判断が出ても、NG になっても、クリエーターを待ち受ける大きな問題があると思います。

 それは「スピード」です。クリエーターの考えていること、実行しようとしていることの内容が OK であっても NG であっても、その素案のままでゲームが制作されることは、まずないと思います。何らかの追加、修正などが必要になってくるはずです。その際に、その調整スピードが遅いと、どんなにクリエーターが考えていることが面白い可能性があっても、ゲーム制作そのものが立ち行かなくなってしまう恐れがあります。

 必要になる何らかの追加、修正として、例えば、

などがあるでしょう。

 これらの調整スピードが遅いと、様々な問題が発生します。例えば、各作業スタッフの待ち時間も当然ながら費用として発生し続けていますので、制作費が膨らみ予算オーバーにつながる。または開発予定期間に収まらず、発売日が延期され商機を逃す。流行り廃りの時流が変わって、販売見込みが立たなくなる。そもそもクリエーターが考えたアイディアが古びる。もしくは同じようなものが先に世に出てしまう。ということがあり得ます。こうなるとプロジェクトは断念、もしくはすでに成立していたとしても中断、ということになりかねません。

 では、どのようにしたら、そうならずに済むのでしょうか。具体的なコツとしては、60~80% の完成度で提示してしまうことです。それは未完成ではないか、その完成度で他人に見せるのは恥ずかしい、怒られるのではないかと思われるかもしれません。ですが、実際に皆さんのされていることを思い返してみてください。本当に重要で価値があるポイントは、実は 20% 程度しかないことに気付きませんか? よって、あとはその 20% を補足するものがあれば充分なのです。それ以上のこと、つまり 60~80% 以上のことは、単に見栄えを良くしたり、体裁を整えたりしているだけの、本質的な価値を生み出さない作業である場合があります。しかし、作業時間にしてみればそれで全体の 50% 以上かかっているということが非常に多くあります。その時間を省けばスピードを上げることができます。

 それでも、本質的に価値のある 20% がその中に必ずなければなりません。これがなければ、いくらスピードがあっても価値はありません。逆にいうと、この 20% の価値を生み出すため(の時間を作るため)に、他の価値の低い点をばっさり切り落とす判断が必要です。

 クリエーターの皆さんにはそれぞれのスタイルがあると思いますので、そのやり方に合うような手法にスピードを持たせてもらえれば、きっと良いゲームを制作できると思います。