【54】見えないものを見えるように

ジョン・ジャガー(Jon Jagger)

 ソフトウェアの世界には、とにかく「目に見えない」ものが多く、目に見えないことが良いとされることもよくあります。目に見えないことに関連して使われる語彙も非常に豊富です。たとえば「メカニズムの透明性」、「情報隠蔽」などはその例でしょう。ソフトウェア自体、元々形がなく、目には見えないものですし、それを開発する過程で何が行われているかも見えにくいものです。ダグラス・アダムズの小説のタイトルをもじって言えば『ほとんど透明』ということになるでしょう。「目に見えない」ということに関しては、次のようなことが言えます。

 何事にしろ、「目に見えない」というのは危険です。人間は目に見えるもの、具体的なかたちのあるものについてはよく考えますが、そうでないものについてはあまり考えない傾向にあるのです。存在や変化が目に見えていれば、それにうまく対処することができます。

 ソフトウェア開発プロジェクトを進める際はいつでも、目に見える証拠がたくさんあるという状態を維持すべきでしょう。目に見える証拠があれば、進捗状況も正確に把握できます。決して頭の中だけの思い込みで判断はしなくなります。突然思いがけない事実が発覚して予定が変わってしまう、ということがなくなり、意図したとおりにプロジェクトが進行するようになります。