【44】方法論を崇拝しない
多くのプロジェクト・マネジャーは方法論にしたがうことに注力しすぎです。これはプロジェクトをうまくやり遂げる妨げになります。もし前の職場で何らかの手法を使っていたり、学校で方法論を学んだり、その認定資格を取得したところであれば、教科書に書いてあるすべてのプロセスとドキュメントを厳密に定めて、教えられたのとまったく同じようにやりたくなるかもしれません。しかし、これには次のような危険な落とし穴があります。
- 必要な労力:参考書に載っているプロセスをすべて完全にやるのは、チームメンバー全員に多大な管理作業を課すことになるかもしれません。あなたはそれに必要な時間と予算見積りについて本当によく検討しましたか? 手順を完璧に整備するのに時間をかけたせいで、プロジェクトがうまくいかなかったというのは、あなたの望みではないはずです。
- 企業文化との整合:あなたのチームはその特殊なプロセスにどれだけ馴染みがありますか? チームメンバーをトレーニングする必要はありますか? トレーニング費用は予算計上されていますか? みんな関心をもってくれていますか? あなたが対応する必要のある職務マネジャーや他部門についてはどうでしょうか? そのプロセスは公式もしくは非公式に定められた会社のプロセスや習慣と矛盾していませんか? もし矛盾があると、プロジェクトにとってリスクになるおそれがあります。
- プロジェクトのフォーカス:プロジェクト・マネジャーにとっての重点項目は、プロジェクトを成功裏に完了することであるべきです。ソフトウェアプロジェクトの場合、これは主にソフトウェアを納品することになるでしょう。あなたが駆使するプロジェクトマネジメント知識はすべて、手段であって目的ではありません。また、あなたのチームは当然のごとく、プロジェクト・マネジャーが重点を置いていることに重点を置きます。もしあなたがプロセスを完全に規定し順守することに重点を置いていれば、それがチームのフォーカスになってしまいます。そうなると、だれがソフトウェアを作るのでしょうか?
- 仮想的、地理的に分散したチーム:もしチームメンバー全員が同じ場所にいないなら、必須の手続きを設定して強制的に守らせるのは、相当困難になるでしょう。ハードウェアやソフトウェア、その他の技術を、あなたの要求にしたがわせるのは困難あるいは不可能かもしれません。プロジェクトとして必要な製品やサービスを離れたチームに納品させるときには、あまり多くを期待しないようにしましょう。
結局のところ、あなたの良識以上に重要で順守すべきだと思えるプロジェクトマネジメント本や方法論などは存在しないのです。あなたはまず、製品分析、契約分析、リスク分析のために、主要なステークホルダー(クライアントやスポンサー)とのインタビューをやるべきです。それからプロジェクトマネジメント戦略について検討し選択しましょう。
自分自身のために「私はこのような方法でプロジェクトを管理するつもりです。なぜなら……」といったドキュメントを書いておきましょう。これは根本的な判断理由が変化したときに、マネジメント戦略を調整するのに役立ちます。プロジェクトのニーズに基づいて、一番重要できちんと実施すべきプロセスは何なのか、もっと軽いやり方が適しているプロセスはどれなのか、判断しましょう。結局のところ、すぐれたプロジェクトマネジメント計画は効果的でシンプルであること、それがすべてなのです。