【33】チヤホヤされるための努力

小林 貴樹

 小さいころから何か突飛なことや滑稽なことをしては注目を浴びたがる性格でした。大人になっても、それは変化していません。生きる上での行動指針が「目立つこと」「チヤホヤされること」であり、そのために毎日、ネタになることは何か? を考えながら過ごしています。

 若いころの目立ちたい気持ちは、基本的に「モテたい」に直結していました。でも、歳を取ってくると「誰でもいいから楽しい気分にさせたい」へ変化しました。これは「一人暮らし」、「結婚」、「昇格」、「子供の誕生」、「二世帯同居」という環境の変化の影響が大きいと思います。それに伴って、接する対象の年齢幅が広がってきました。

 そうなると、対象年齢層に合わせた話題作りが必要になります。しかし、初めて接する相手との会話を成立させるのは非常に難しいものです。特に相手との年齢差がある場合、最初のテーマが難問です。こちらは早くチヤホヤされたいので自分の得意分野からスタートしたいのですが、より深く良好な関係を瞬間的に構築するためには、まず相手が良い気分になることを考えるべきです。

 きっかけになる最初のテーマは、できるだけ身近で分かりやすく明るい話から探します。最初は時事ネタが確実です。これを得るには、世界からご近所までの話題をカバーしつつ余計な情報も適度に埋め込まれている新聞が最適。1 面記事を読み、新聞全体の見出しだけでも一通り見ておけば、その日に使えそうなネタが 1 つや 2 つ含まれているはずです。新聞の中にある週刊誌の広告やコラムや社説などもネタの候補として使えます。きっかけだけなのであまり深い情報は不要です。

 1 つ目の話題で話ができる状態に入ってしまえば、「それはさておき」などのキーワードから新しいテーマに切り替えることができます。ここからは自分の持ちネタを好きなように話せますが、できるだけ相手の方が興味を持ちそうなネタから始めましょう。いきなりマニアックな話は相手が引いてしまいます。

 年齢を問わず共通の話題として扱いやすい趣味を持つのも手です。「料理」「旅行」「釣り」「映画鑑賞」「家庭菜園」などがお勧めです。話題作りのための情報収集時間が短縮できます。趣味は多い方がネタは生み出しやすいので、休日は趣味によってネタ作りに励むわけです。重要なのは自分の失敗や感動の体験であり、同じことをネットで調べて話しても盛り上がりには欠けてしまいます。自分の失敗談であれば多少の演出強化が許されるのも利点です。

 たとえば料理であればカレーにこだわり、香辛料は個別に購入して自分で挽いて調合してみたり、庭にそのまま植えて育ててみたりと言う発展性が期待できます。簡単なテーマから徐々にややこしい話に結び付けて面白おかしく伝えることで「この人何か楽しい」と思ってもらえれば成功。相手も同じような趣味を持っていれば、お互いに楽しい時間を過ごすことができます。これが理想のチヤホヤしあう関係です。

 どんなに難しい取引でも、相手がどんな人なのかが分かれば話は進みやすくなります。相手とチヤホヤしあえる状態が生み出せると、初めて会った人でも昔からの長い付き合いのような気持ちになれます。これは、腹の探り合い時間を短縮させる効果があります。一緒に楽しいものを作りたくて話が始まったのであれば、その瞬間に楽しい話に入れることが一番良いはずです。

 もっともっと楽しい人達との出会いを増やしてチヤホヤしあえる関係を強化させるためにも、これまで以上に新しい知識(ネタ)を仕入れる活動に励もうと思っています。