【06】お宝と燃料を同時に手に入れよう!

岩出 敬

 ゲーム開発は非常に楽しく、またやりがいのある仕事です。私のようなアーティストであれば、手を掛けるほど目の前でどんどん表現が洗練されて行きます。プログラマーやゲームデザイナーも、やればやるほどゲームが面白くなって行くのを実感できます。ひたすら PC(や実機ターゲット)に向かって行う作業それ自体が充足感をもたらしてくれる仕事といえます。また、(特にコンソールゲームの開発は)一つのプロジェクトが短くて一年、長いと数年に渡る場合がほとんどです。その結果、多くの開発者は良い意味でも悪い意味でも目の前のタイトル制作に、長期間集中することになります。

 一方、近年はゲームにおける表現の可能性は拡大し、必要になる技術もどんどん高度かつ広範囲になって来ています。これに対応するために、より多くの情報を外部から入手して勉強する必要があります。しかし、目の前にある楽しくて、やりがいのある仕事に没頭するあまり、他に目が行かなくなる傾向になり、自分から勉強する時間を絞り出すのも難しい状況になりがちです。

 つまり、ゲーム開発の仕事を進めながらの情報収集や勉強は、できるかぎり効率良く行わなければなりません。具体的には技術書や WEB 記事のようなものからの資料収集や、セミナーや勉強会への参加などがあります。ここでは私自身の経験から、特に後者のような人が集まる場に参加する事の有用性を挙げたいと思います。その理由は、そこで得られる情報が有用であるのと同時に、そこでしか得られない「繋がり」が、勉強を続けるモチベーションを保つための「燃料」でもあるからです。得られる「お宝」は知識や情報だけではありません。

 もちろん技術書や WEB 記事から学ぶことができる知識や技術はたくさんあります。特にネットによる情報収集が飛躍的に容易になった現在においては、世界中の大量の情報に、席にいながらにしてアクセスすることができます。しかし、この方法は孤軍奮闘になりがちです。目の前の仕事が忙しい中で、ひとりで勉強のモチベーションを継続的に保つには強い意志を持つ以外になく、なかなかできることではありません。反面、セミナーや勉強会は自分と同じ事に興味を持ち、あえて時間を割いて足を運ぶほど貪欲に学習する意図を持った人と出あう事ができる場所です。同じ会に参加した人たちと講演の内容について意見交換をしたり、参加に至るまでのお互いが抱えている問題を共有する事を通して、単に受け身に情報を貰うだけでなく、より広い視野を持って自分の仕事を見つめ直す機会にもなります。そして、そこで生まれた「繋がり」を絶やさず、次に再会した際に前回交換した情報をお互いがどう活かしたかなどを更に深く話せるようになっていく事で、得られるものも増えていきます。

 その流れの中で、自分の意見をしっかりと持つことや、自分がやっている事を正確、かつ簡潔に人に伝えられるレベルまで深い理解をする、といった形でプロ意識は強まり、結果として目の前の仕事に対するモチベーションもより高まる事になります。そういった「繋がり」の力に後押しされる事で、忙しい中でも、一人では困難だった外向きなアクションを継続でき、常に積極性を持つ事が出来ます。自分が講演者側に回ることがあれば、この効果は更に高まります。

 目の前の事で手一杯になり、心に余裕が無くなっている時にこそ、あえてモチベーションの補給源としてそういった場に参加してはいかがでしょう。向学心に溢れ、刺激しあえる仲間との良い出会いが待っているはずです。